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夏の年次業務 賞与支払届に関するギモンにお答えします!

算定・労働保険の年度更新・夏の賞与支給と、慌ただしい時期が過ぎ、人事担当者はほっと一息をついている頃かと思います。本コラムでは夏の年次業務の最後の作業となることが多い、賞与支払届に関する様々なギモンにお答えします!

 

<質問1:賞与支払届とは?>

 

賞与支払届とは何ですか?

 

賞与支払届とは、事業主が社員に賞与を支払った時に年金事務所や健康保険組合に届け出るものです。

この届出内容により、標準賞与額が決定されて保険料額が決定されるとともに、社員が受け取る年金額の算出の基礎となります。賞与支給日から5日以内に届け出ることとなっていますので、忘れずに提出しましょう。

 

 

<質問2:賞与の支給がなかった場合は?>

 

年金事務所から賞与支払届・総括表の用紙が送られてきましたが、今年は賞与の支給が無かったので特に届出をしなくても良いのでしょうか?

 

賞与の支給がない場合、総括表に「支給なし」と記入して届出が必要となります。

なお、届出書類は総括表のみで、賞与支払届は必要ありません。

 

 

<質問3:報奨金を支給する場合>

 

社員に報奨金を支給したいのですが、賞与支払届の提出は必要ですか?

 

賞与を支給した場合、事業主は年金事務所や健康保険組合に賞与支払届を提出する必要があります。

賞与とは、名称の如何を問わず、労働者が労務の対償として受けるもののうち、支給回数が年3回以下のものをいいます。

報奨金という名目でも、上記に該当する場合は、賞与支払届の提出が必要になります。

なお、年4回以上支給の場合は標準報酬月額の対象となりますので注意が必要です。

 

また、大入り袋や、恩恵的に給される見舞金など賞与の対象とならないものもありますので、確認して手続を行いましょう。

 

 

<質問4:賞与をひと月に2回支給する場合>

 

 例年7月10日に夏季の賞与を支給していますが、業績が良かったため、7月25日に決算賞与を支給することになりました。この場合の賞与支払届は、別々に作成するものなのでしょうか。

 

賞与を支給する日が異なっても同月内に支給するのであれば、夏季賞与と決算賞与を合算した額を賞与支払届に記載し届出します。

注意すべき点は、全国健康保険協会管轄の健康保険料(健康保険組合の場合はお気をつけ下さい)と厚生年金保険料の考え方です。

 

健康保険料は年間573万円(4月~翌年3月の1年間)が上限となります。したがって、夏季賞与で200万円、決算賞与で400万円を支給した場合には合算で600万円、573万円を超えた27万円には健康保険料はかかりません。別の時期に賞与を支給していた場合や今後支給する場合は、それも合算して計算する必要があります。

 

厚生年金保険料は1回の支給につき上限150万円となっています。同月である7月に2回支給したとしても、それは1回としてカウントします。夏季賞与で200万円、決算賞与で400万円を支給した場合、150万円を超えた決算賞与分には厚生年金保険料はかかりません。

 

合算した賞与支給額を賞与支払届に記載すれば、会社指定口座から引き落とされる社会保険料は間違いありませんが、給与計算上は注意が必要です。

 

 

<質問5:賞与支給月に退職する社員がいる場合>

 

賞与支給月に退職する社員がいます。月の途中で退職した場合、その月に支給される賞与から社会保険料を徴収する必要はないと認識していますが、賞与支払届の取扱はどうなるのでしょうか?

 

質問に記載されている通り、月の途中で退職した場合は、その月は社会保険料徴収の対象となりませんので、退職月に支給された賞与から保険料を控除する必要はありません。

 

「社会保険料を徴収しないケースについても、賞与支払届の提出が必要か?」という点については、以下のようになります。

 

(1)退職日以前に支給される賞与であれば、社会保険料がかからなくても提出が必要

 

年度(4月~翌年3月)の賞与累計額を算出し、累計額が573万円を超過する場合は、超過する賞与額に対し健康保険料は徴収なしとされます。この「累計」は、退職し再就職をしたときも再就職先の保険者(健康保険を運営している「協会けんぽ」「○○健康保険組合」などを「保険者」と呼びます。)が同じであれば、合算をします。このように、退職者についてもその後の再就職先で賞与が支給されたときに、年間の賞与累計額を算出することがあるため、保険料徴収がない場合であっても賞与支払届を提出します。

 

この取扱いは、退職だけではなく育休中等で保険料徴収を免除されている者についても同様で、育休中に賞与支払があったときは、保険料徴収がない場合であっても、賞与支払届には氏名や賞与額を記載して届出を行います。

 

 

(2)退職日後に支給される賞与については、提出は不要

 

退職日後はそもそも被保険者ではないため、退職日後に支給された賞与は、上記の年間累計には含まれません。そのため、賞与支払届も不要となります。

 

 

<質問6:退職する社員の保険料控除は訂正?>

 

退職する社員から賞与にかかる保険料を控除してしまいましたが、賞与支払届の訂正は必要ですか?

 

賞与支払い時には退職することがわからなかったため、資格喪失月に保険料を控除してしまうことがあります。

 

保険料は、資格取得した月から資格を喪失した月の前月までに支払った賞与に対して賦課されるため、資格喪失月に支払われた賞与には保険料は賦課されません。

 

控除してはいけない保険料のため、本人に保険料を返還しなければなりませんが、賞与支払届がすでに提出済みであっても年金事務所では事業所からの被保険者資格喪失届を提出することにより保険料を賦課しないことを把握できるため訂正届の提出は必要ありません。

 

関連サービス:給与計算アウトソーシング|人事・労務・社会保険サービス

執筆者:中谷

写真:123RF

 

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